DXの取り掛かりとして
はじめに
当社ではこれまで、150社以上のさまざまな業界のお客様から、購買業務に関する課題や、情報システムに対する期待・ご要望など、幅広いお話を伺ってきました。
本コラムでは、その中でも購買業務を担当されている方々に焦点を当て、課題やニーズを整理・総括し、購買処理を支える情報システムとその運用のあるべき姿をシリーズ連載にしてご紹介していきます。
情報システム部門の視点による、デジタル購買へのアプローチとは?
皆様の購買業務の改善に向けたヒントとして、本コラムがお役に立てば幸いです。
1. 改善すべき課題の根幹
購買業務において、近年どのようなIT活用が進んでいるのか。
このテーマは、現在IT市場で飛び交っている「AI利活用」というキーワードと結び付けることで、比較的容易に語ることができます。
しかし、実際に明確な数値を伴う運用効果を示した情報には、なかなか出会えていません。それは、多くの事業社において克服したい課題が大きくは変わらない一方で、事業社自身がそれらの課題に対し、施策を積み上げて実行できていないからではないかと推測されます。
まず、改善すべき課題は以下の三点に集約されます。
① 購買コストの低減
② 処理の省力化
③ ミスの撲滅
本章では、これらの克服すべき課題を起点として、どのような情報処理対策が求められるのか、そしてその手段を昨今のITトレンドの中でどのように選択し、効果へと結び付けていけるのかを述べていきます。
2. 課題点から組み立てるシステム化の基本要素
克服すべき課題はいずれも、情報システムが本来持つ要素、すなわち構想や設計の段階で定義される要素の中に含まれています。 これを情報システムの構成要素として具体的に見ていくと、理解しやすくなります。
- 1)情報をデジタル化する
- 2)デジタル情報を区分け・整理し、格納する
- 3)ネットワークを通じ、適切なタイミングで、場所を選ばず情報を照会できる
- 4)情報の照会・更新において、ユーザー情報に基づく権限制御ができる
- 5)情報更新のプロセスを定義し、業務ルールを設定することで異変を防止できる
- 6)経過情報や結果情報、外部入手情報を分類・付与しながら蓄積し、要求に応じた情報を的確に照会できる
これらの要素をもとに、情報アイテムの仕様定義、データベース設計、照会・更新仕様、通信ネットワーク、サーバー構築、データやアプリケーションのリソース配置、ユーザーや処理権限ルールの設定を行い、購買業務システムは構築されます。
つまり、前述した課題の多くは、購買情報システムの導入によって基本的にはカバー可能であると言えます。
3. 課題克服にブレーキをかけるテーマ
一方で、課題解決に近づかないご相談も少なくありません。
購買業務は、見積取得、社内稟議、決裁、発注、納品・検収、請求処理、支払・出金と進み、手続きとモノとお金の流れは本来完結します。
しかし、従来からの業務慣行や取引慣行が、処理を複雑化させたり、システム外処理を挟む要因となっているケースが多く見られます。
- 1)条件によって処理方式を切り替える社内ルール
例:別機関化した稟議決裁、特殊権限者の関与、会計処理ルールに沿った定義や処理 - 2)取引先ごとに異なるルール
例:発注書面を含む契約処理、仕入債務の確認方法 - 3)取引条件の変動・複雑化
例:数量・単価・納期の変動
このような場合、システム構造が複雑化したり、システム外での帳票作成や転記、照合作業が発生します。必要な対応ではありますが、一貫したシステム処理が分断され、人手に依存する領域が増えてしまいます。
前回のコラムでも触れたとおり、業務プロセスはできる限りシンプルにし、一気通貫の処理を目指すことが重要です。
4. 処理の迅速化・正確化を促進するしくみの必要性
業務のシンプル化を図り、基本的な購買情報システムを導入することで、業務革新は一歩進みます。ただし、ここまではいわば「前世紀型」のシステムの考え方です。
さらに導入効果・運用効果を高めるために求められるのは、「スピード」「正確性」「有効なコミュニケーション」「脱会議」「脱人依存」です。
例えば、以下のような観点が挙げられます。
① 一つの処理結果から、次のアクションをいかに迅速に促すか
② 情報が持つ特性を活かし、選択や意思決定を正確に支援する
③ 依頼や指示の詳細・補足のためのコミュニケーションを促進する
④ 対象情報に関連する留意情報を活用し、判断精度を高める
これらは、取引先担当者を含め、多くの部門・関係者が関与する購買業務において、人の動きをシステマティックに導くためのしくみとなります。
5. 求められる具体的なシステム機構
前述したスピードや精度を高める機構は、必ずしも新しい技術ばかりではありません。
既存技術を組み合わせ、適切な位置に配置することで実現できます。
例えば、以下のような機構です。
- a. 部門間・担当・職位をつなぐメール通知
- b. モバイルやタブレットを含むデバイス対応
- c. 品目・仕様・取引先・日付・数量・価格を紐づけたデータベース
- d. プロセスとユーザー職位・組織・処理権限を紐づけたTodo管理、通知、督促
- e. リードタイム・期限・過去実績を加味したスケジュール管理
- f. 関係部門、各担当者、取引先担当者間のチャット・コミュニケーション履歴
- g. 書面を極力削減し、見積・発注・検収・請求をシステム上で相互参照
- h. 類似・頻繁発注情報や、他部門での手配情報の参照・共有
さらに、データドリブンによる高度な判断やリスク管理を求められるケースも増えています。
① サプライチェーン情報
② 検収歩留まりに基づくリスク指標
③ 在庫変動予測とコストシミュレーション
そして、AIによる判断支援も、そろそろ視野に入ってきています。
6. 現状と自社力を考えたシステムの選定と拡張
購買業務のシステム化要件は、追求すればきりがありません。
重要なのは、「どこまで機能を使いこなせるか」「情報を活用できるか」です。
AS-IS(現状)を把握し、TO-BE(理想像)を描くことは重要ですが、同時に現実解であるCAN-BEを見極める必要があります。
そのうえで、将来的な拡張性を考慮しつつ、ベンダードリブンではなく、自社で計画・運用できる自社力を踏まえた判断が求められます。
シンプルでありながら拡張性を持つ購買システムを計画・選定すること。
それこそが、DX推進における最重要ポイントであると言えるでしょう。