DXの取り掛かりとして
はじめに
当社ではこれまで、150社以上のさまざまな業界のお客様から、購買業務に関する課題や、情報システムに対する期待・ご要望など、幅広いお話を伺ってきました。
本コラムでは、その中でも購買業務を担当されている方々に焦点を当て、課題やニーズを整理・総括し、購買処理を支える情報システムとその運用のあるべき姿をシリーズ連載にしてご紹介していきます。
情報システム部門の視点による、デジタル購買へのアプローチとは?
皆様の購買業務の改善に向けたヒントとして、本コラムがお役に立てば幸いです。
1. 事業社内でのデジタル化のこれまで
情報システム部門は、社内システムの維持・保守に加え、近年ではセキュリティ対策や全社的なデジタル化推進の旗振り役としても期待されています。
しかし、実際には多くの業務領域でシステム導入が進んでおり、「次にどこをデジタル化すべきか」と悩む担当者も少なくありません。
これまでの流れを振り返ると、給与計算や会計などの定型処理からシステム化が始まり、続いて販売管理や生産管理といった業績・効率化領域へと広がってきました。情報システムと事業活動が相互に発展してきた結果、デジタル化は一定の成熟段階に達しています。
ポイント
- ・情報システム部門は「維持・保守+デジタル推進」の両軸で活動
- ・定型業務(給与・会計)→ 販売・生産管理へとシステム化が進展
- ・現在は「次にどこをデジタル化すべきか」が課題
2. 意外に取り残されている購買業務
経費精算や申請業務などはWebサービス化が進み、組織横断で標準化されています。
一方で、購買領域では「見積依頼・業者選定」などの**sourcing(調達前工程)**が、依然として人手による対応にとどまっている企業が多いのが実情です。
販売管理や生産管理システムには「発注〜仕入」の数値処理(purchasing)は含まれているものの、取引先とのやり取りや見積比較など、非定型な業務が多いことがデジタル化の遅れにつながっています。購買担当者の経験や慣習に依存したプロセスが多い点も、システム化を阻む要因の一つです。
ポイント
- ・経費精算や申請業務は標準化・デジタル化が進展
- ・purchasing(発注~仕入)はシステム化済みが多い
- ・sourcing(見積・選定)は非定型業務が多く、人依存で未デジタル化
- ・経験や慣習に依存したルールが障壁となりやすい
3. 購買DXの取り掛かりやすさを考える
調達プロセス(procurement)は、要求定義から支払承認まで幅広く、関係者も多いため、一見するとシステム化のハードルが高そうに見えます。
しかし、販売管理のように「顧客ルール」に左右されにくく、自社ルールを基準に標準化しやすいという利点があります。
言い換えれば、購買プロセスは「自社内で定義できる自由度が高い領域」なのです。
これまでデジタル化が進まなかった背景には、「経験者の勘に頼る」「業務フローが整理されていない」など、人間系のルールが残っていたことが大きいといえます。今こそ、それを見直す好機といえるでしょう。
ポイント
- ・購買(procurement)は範囲が広く関係者も多いが、
- → 自社ルールで定義しやすく、標準化に向く領域
- ・障壁は「人依存」「業務整理の不足」
- ・販売管理よりも自律的に設計できる点が強み
4. 購買DXへの今後のテーマ
購買DXに取り組む第一歩は、自社の調達プロセスを「見える化」することです。
まずは文字より図を中心に、調達の流れを図式化してみましょう。視覚化することで、他部門との関係性や承認ルートが見えやすくなります。
その上で、どの業務をどの部門が担っているか、購買部門にどの程度集中しているか、承認や判断はどの段階で行われているかを整理します。
ここで重要なのは、ワークフロー上での承認プロセスと、紙・帳票のやり取りがどこにあるかを明確にすることです。もし手作業で書類を作成しているなら、そこからデジタル化を始めるとよいでしょう。
この整理を行うだけでも、業務全体の流れや情報の関連性が見えてきます。データベース設計や画面仕様を定義する前に、「業務を構造化すること」が購買DXの第一歩です。
弊社クレオでは、こうした序盤フェーズ(構想段階)の整理支援を重視し、多くの企業様の購買DX推進をサポートしてきました。 まずはぜひ、自社でプロセスを描き出すことから取り組んでみてください。
ポイント
- ・最初のステップは「自社調達プロセスの見える化」
- ・図で表すことで、部門間の流れや承認ルートが明確に
- ・紙・帳票・手作業の箇所を特定し、そこからデジタル化
- ・業務の構造化がDXの出発点
- ・クレオは構想段階から企業の購買DXを支援
まとめ
購買業務は、一見アナログな領域に見えても、ルールが自社内で完結しているためDXに取り掛かりやすい分野です。重要なのは、いきなりシステムを検討するのではなく、まずは業務構造の「見える化」と「整理」から始めること。
この一歩が、DXの成功を左右する基盤となります。