

取引先との関係や取組

はじめに
当社ではこれまで、150社以上のさまざまな業界のお客様から、購買業務に関する課題や、情報システムに対する期待・ご要望など、幅広いお話を伺ってきました。
本コラムでは、その中でも購買業務を担当されている方々に焦点を当て、課題やニーズを整理・総括し、購買処理を支える情報システムとその運用のあるべき姿をシリーズ連載にしてご紹介していきます。
購買部門の声に応える、システム化に必要な視点とは?
皆様の購買業務の改善に向けたヒントとして、本コラムがお役に立てば幸いです。
1. グループをまとめる集中購買のメリット
グループ企業全体での購買ニーズを集約し、一括して発注する「集中購買」に関するご相談をいただくことがあります。これはグループ会社の購買業務を一元化する取り組みで、以下のようなメリットが期待できます。
ボリュームディスカウントの獲得
類似または同一の品目をまとめて手配することで、取引先との価格交渉力が向上します。
業務コストの削減
発注・見積・納期調整などの業務プロセスが一本化され、各社個別対応の負担が軽減されます。
情報の集約と活用
取引先や価格に関する情報を集中管理し、全社的な判断材料として活用できるようになります。
ただし、集中購買を担う中央購買部門には、処理件数や業務量が集中するため、業務のシステム化による効率化が不可欠です。
2. システム導入に向けた取り組み
グループ会社はもともと別法人であったり、事業内容や規模も異なるため、まずは購買業務に関するルールの統一が必要になります。具体的には以下の点が主な整理対象です。
- ルール化に向けた整理対象
- • 決裁規程、承認フローの統一
- • 発注先の選定ルールの明確化
- • 発注伝達、納期回答の方式統一
また、意外に重要なのが取引品目の分類定義です。ここは見過ごされがちですが、共通システム導入の成否に大きく影響します。
- 分類において検討すべき点
- • 分類の必要性に対する全社的な認識
- • 分類の視点・切り口と分類階層の設計
- • 品目と会計項目(勘定科目)との紐付け
このような共通ルールや分類の整備が、システムの基盤となります。
3. 情報共有システムの意義と課題
グループ各社が扱うモノやサービスは多様ですが、中には共通または類似するものも少なくありません。
これらの情報を可視化・共有する仕組みとして、情報システムの活用が有効です。
ただし、実際には以下のような懸念から、情報開示に消極的な声が上がることもあります。
- • 他部門・他社に価格情報を見せたくない
- • 競争関係にある事業間での情報共有への不安
それでも、情報をあえて開示し、共有することには多くのメリットがあります。
- 情報共有によるメリット
- • ボリュームディスカウント要求の集約
- • 手配方法や仕様の標準化・最適化
- • 価格・仕入先情報の透明化と相互活用
情報を囲い込むのではなく、積極的にオープンにする文化づくりが、全体最適の第一歩になります。
4. グループ間取引のあり方を見直す
グループ内で必要な物品やサービスを融通し合うこともあるでしょう。一方で、「グループだから」だけを理由に内部取引を優先することには注意が必要です。
- • 外部の製品やサービスとの価格・品質比較を常に行うこと
- • 競争力のある外部業者の存在を認識し、自社に正しく伝えること
これらは購買部門の大事な役割です。経営的な視点では、内部取引であっても適正価格やサービスレベルを担保する仕組みが求められます。
5. グループ購買システム導入に求められる「チーム力」
集中購買を実現するには、グループ全体での横断的なチームづくりが欠かせません。以下のような構成が理想的です。
- • 情報システム部門
- • 各社の購買部門代表
- • 会計・経理部門(勘定連携の観点から)
さらに、グループ購買に関するシステム導入経験を持つ外部パートナー(ITベンダーやコンサルティング会社)を参画させることで、早期の導入と安定運用が可能になります。
6. 戦略的な集中購買でグループ全体の競争力を高める
集中購買は、単なる業務の一本化ではなく、グループ全体のコスト競争力・調達精度を高めるための戦略的な取り組みです。
業務の標準化とシステム化、情報共有、社内外の公正な比較・選定を通じて、購買部門がグループ経営に貢献できる体制づくりが求められます。