

要求部門との関係、連携について

1. 発注決定の基本要素
発注の決定要素は、製造業などでよく使われる「QCD」――すなわち品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)が基本となります。発注は、この3つの要素が要求に対して満たされると判断された場合に行われるのが一般的です。
ただし、調達対象によって購買担当者が重視すべきポイントや、要求部門との連携方法は大きく変わってきます。たとえば、それがモノなのか、役務やサービスなのか。あるいは、モノであっても量産品か個別生産品か、仕様や規格の厳格さなどによって、購買部門の役割も変動します。
2. 調達対象ごとの連携の違い
品質要件の比重が高い調達では、購買部門が当該分野に詳しくない限り、要求部門が提示する仕様を正確に取引先へ伝える「橋渡し」の役割が強くなります。場合によっては、取引先と要求部門が直接やり取りすることもありますが、見積の段階では仕様によって納期や価格が変動する可能性があるため、購買部門が両者の間に立ち、条件の再調整を行う必要があります。
一方で、定型商品や量販品の調達では、仕様や品質がある程度安定しており、複数の取引先から見積を取ることも可能です。このような場合、主な交渉ポイントは価格になり、購買部門の関心は取引先とのやり取りにシフトします。要求部門には、価格が想定内に収まるかどうかといった着地点を報告する形が一般的です。
3. 発注に至るまでの社内連携
上記のように、調達対象によって業務の進め方が異なるとはいえ、発注までの間に多くの情報連携が必要となります。特に、納期が限られている中で、やり取りに時間を費やしてしまうと、納入スケジュールに影響を及ぼすリスクがあります。
最低限必要となる連携内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- ●要求仕様の明確化
- ●QCDにおける許容範囲の確認
- ●見積取得とその比較
- ●発注候補の選定と判断根拠の共有
これらをスムーズかつ整然と進めるために、多くの企業では「要求仕様書」や「購買依頼書」の提出を要求部門に依頼しています。とはいえ、毎回手書きやExcelでこれらをまとめるのは手間がかかる作業です。現在でも、Excelベースで運用している企業は少なくありません。
4. 発注責任と購買部門の役割
購買部門が果たすべき重要な役割の一つが、発注先の決定とその責任を担うことです。単なる情報の受け渡し役ではなく、過去の実績や交渉の経過、判断ポイントを踏まえて、要求部門に納得感のある提案を行うことが求められます。これがなければ、購買部門の存在意義は薄れてしまいます。
5. 仕組みとして求められること
情報伝達そのものはExcelやメールでも可能ですが、過去の事例の蓄積や類似ケースの検索、さらには判断要素を活用したデータベースの整備は、購買業務の質を高めるうえで非常に有効です。
また、「依頼しました」「受け取りました」「承認しました」といった業務の流れを、データベースとワークフローを通じて一元管理できる情報システムの導入が望まれます。つまり、思考や判断、決定プロセスを含めた業務の全体像をシステム上で再現・管理することが、現代の購買業務において重要なポイントになっています。
このような観点から、情報システム部門には、こうした仕組みを支える役割が期待されます。そして購買部門には、情報の流れと意思決定を主導・加速する責任が求められているのです。