
1. 急いで欲しい要求現場
購買部門は、要求部門から上がってくる複雑な仕様や取引条件に対応しながら、取引先への見積依頼(いわゆる「引き合い」)や、選定・発注といった重要なプロセスを担っています。
しかし一方で、実際の現場では、要求部門が取引先に直接手配をかけてしまうケースも少なくありません。価格や納期、納品スケジュールの確認が不十分なまま、「とりあえず頼んでおこう」と動いてしまうこともあります。中には、メール1本・電話1本・口頭での発注ということも。
現場としては「取引先には信頼がある」「スケジュールが切迫している」といった理由から、上司に口頭で了解を取るだけ、あるいは後回しにしてしまうこともあります。
もちろん、こうした“先行手配”が問題にならないケースもあります。たとえば、仕様通りに納品され、納期に問題がなく、コストも予算内で収まっていれば、大きなトラブルにはなりません。
しかし、品質に不具合がある、想定より価格が高い、納期に遅れが出たとなった場合には、その調整やリカバリーは、結局、購買部門が担うことになります。
まさに“苦いオハチ”が回ってくるのです。
2. 紙、口頭、印鑑の文化
多くの企業では、購買規程や承認規程、権限規定などが定められており、どの取引先に見積依頼(引き合い)を出すか、どの条件で発注するかといった判断は、しかるべき責任者の承認・決裁を経て行うのが基本です。これは、健全な取引と内部統制のためには当然で不可欠なプロセスです。
しかし実際には、「急ぎで発注したいのに、上司がつかまらない」「承認印を押してもらえない」「そもそも申請内容が不十分で差し戻される」など、紙ベースの決裁に時間がかかるケースが今なお多く見られます。
中には、申請が通ったあとも「注文書を起票 → 書類を印刷 → 取引先に送付」というアナログ手順を踏んでいる企業も。さすがに郵送は減りましたが、FAXでのやりとりが残っている現場も少なくありません。
こうしたプロセスの遅れが、「正規の手続きは面倒」「時間がかかるから先に手配しよう」といった“抜け道”を生みがちです。しかし、チェックを飛ばした発注には、後々のトラブルやリスクが潜んでいるのも事実です。
3. デジタル化への初めの一手
たとえば・・・承認ルートに従って上長や責任者へ自動でメール通知。そして、メールから直接、申請内容の画面にアクセスしてそのまま承認。さらに、承認済みの発注依頼に対しては、発信権限のある担当者がワンクリックで注文書を送信。仕様書や図面は発注メールに添付。
情報システム上で要求内容を入力すれば、これらの一連の処理がシステム内で完結することができます。そのため、社内規程に即したデジタル処理が一貫して行える情報システムは、もはや現代の必需品といえるでしょう。
実際に、システム化していない企業でこれらの処理をデモンストレーションでお見せすることがありますが、「まずは自分たちの業務でも試してみたい」ということになり、トライアル導入を希望されるケースが大半であるのもうなずけます。