進捗の見える化で実現した工務購買のデジタル革新

進捗の見える化で実現した工務購買のデジタル革新

本事例は食品製造業の株式会社正栄デリシィが購買統制クラウド「トラミル」を導入したことで実現した、工務保全課の購買業務におけるデジタル革新の取り組みを紹介する。どのような課題を改善したのか、更には本稼働から3ケ月経って実感している効果を同社の実務に携わるキーマン達に伺った。

法人概要

株式会社正栄デリシィ
URL:https://www.shoeidelicy.co.jp/

  • ●代表者:代表取締役社長 中島 豊海
  • ●設立:2007年1月(正栄食品工業㈱菓子事業の再編成として設立)
  • ●事業内容:チョコレート、ビスケット等の菓子製造および販売
  • ●本社・工場 所在地:茨城県筑西市野殿1555
    東京本社:東京都台東区秋葉原2-3 2F-201
  • ●従業員数:299名(2023年10月現在)
  • ●株主:正栄食品工業株式会社(東京証券取引所 プライム市場)全額出資子会社
チョコレート、ビスケット等の菓子

食品製造業における工務保全課の役割とは

食品製造業における工務保全業務には、主に製造設備や施設の保守・管理・改善といった、衛生基準に適合した保全活動と、製造ラインの稼働率を高めるためのトラブルの迅速な解決や予防保全活動がある。株式会社正栄デリシィ・筑西本社工場の工務保全課も同様だ。
製造設備に不備があれば、迅速に対応して修理を行い、生産ラインのダウンタイムを最小限に抑えなくてはならない。そのために、設備メンテナンスや部品・資材を確保しておくための工務関連の購買業務など、工場運営の根幹を支える重要な役割を担っている。

工務保全課では、それまで紙ベースであった購買業務のデジタル化を図るため、2024年6月より「トラミル」の導入プロジェクトをスタートした。7月中旬からは実業務をもってトライアル運用を開始、9月からは本格的にトラミルを利用したデジタル購買に切り替えている。

同社の生産管理部・課長の石塚氏と工務保全課・課長の服部氏に、導入に至る経緯やその後の成果などについて、具体的なお話を伺った。

システム導入に至る背景

トラミルを導入する前の工務保全課では、購買業務にどのような課題を抱えていたのだろうか。

「やっぱり紙ですね。紙ベースの運用によって大きく3つの課題がありました」

このように語ってくれたのは生産管理部・課長の石塚氏である。

「当時の状況は、発注をするにしても、なにをするにしても、紙ベースの運用でした。購入依頼書を書くところから始まり、そこから複数の関係者が捺印・承認をして、やっと工務の服部のところに届きます。そこから、見積もりを取って発注をするというような流れだったので、とにかく時間のかかるプロセスでした」(石塚 氏)

この紙ベースによる「時間のかかる購買プロセス」によって、真っ先にあがったのが「発注処理の進捗状況が見えない」という問題だ。

「プロセスが長いと、仮にどこかで処理が滞っていたりすると、『手配はどこまで進んでいるの?』『見積もりまでいっているの?』『そもそも、その前に工場長まで申請は通っているの?』と、状況把握が大変になります。つまり、なにかあった時に、すぐには状況を把握できないという課題がありました」(石塚 氏)

更に、紙による課題としてはペーパーレス化の推進や電子帳簿保存法の対応があったと言う。

「どの企業でもそうだと思いますが、電子帳簿保存法を背景に、ペーパーレス化による業務効率化や業務品質向上は重要な推進事項ですが、一方で電子帳簿保存法の対応による業務負荷が工務の課題になっていました。例えば、見積書や発注書などの購買関連書類を紙から電子データにして保管しないといけない訳ですが、発注件数が非常に多いので、最終的に関連書類を保管するまでに相当の時間と手間がかかるようになっていました。しかもその作業の全てを工務の服部が一人で対応していたんですね」(石塚 氏)

そこで、『進捗の見える化』『ペーパーレス化』『電子帳簿保存法対応の時間短縮』を目標に、購買管理システムの検討が始まったという。

デジタル化で解決したい課題

  • ・進捗の見える化
  • ・ペーパーレス化
  • ・電子帳簿保存法対応の負荷軽減

システム化の基本方針

そもそも、働き方改革をはじめ、昨今のペーパーレス化の動きが活発にある中で、工務保全課がこれまでシステム化に着手できずにいたのはなぜだろうか。

「食品製造にかかる原料や包材などの購買業務は生産管理部門が管轄していますが、工務関連の発注業務の場合、製造機械の部品が細かく種類や数も多い。しかも、工務という業務は製造ラインの稼働を守るためにあります。購買業務の運用変更によるトラブルが製造ラインに影響を与えるなんてことは絶対にあってはいけないので、なかなか安定している運用を変更することができず、紙ベースを継続していました」(石塚 氏)

ただし、安定した運用と言っても、まったく問題がなかった訳ではなかったようだ。発注件数が多いため、紙ベースの運用では管理にも限界がある。過去には購買関連書類の紛失といった問題が発生したこともあったようだ。

「1カ月の工務の発注件数は平均で100件ぐらいになります。稀ですが、過去には物品購入依頼をして、その購入依頼書が無くなってしまうということがありました。そうなると、現場は混乱しますよね。『発注依頼はかけているけど・・・』『購入依頼はかけているけど・・・』『1カ月経っても何の返答もない』ってことになって、服部の方に問い合わせが入ってくる訳です。それで、服部がいろいろ調べてみると、該当する依頼書が届いてないことがわかる。そこで、やっと発注プロセスのどこかで依頼書が行方不明になっていたということがわかったんです。当然、その後は、緊急対応で手配してリカバリすることになります」(石塚 氏)

普段からこのような緊急の処理が発生しないよう、予備の在庫を持つなどの対策は取りつつも、それで十分とは考えていなかったようだ。実際に実務に当たっている工務保全課の服部氏は次のように語った。

「基本的には生産ラインの現場にとっては、すぐに欲しいものがほとんどですから、稀であっても、手配が遅れるようなことは絶対にあってはいけません。それだけに、問い合わせ対応で注文書や見積書を調べるのに、時間や手間がかかる状況は改善しなくてはいけないと感じていました」(服部 氏)

このような状況があり、特に「進捗の見える化」の実現は重要なテーマとして、重視すべきシステム化方針に位置付けられていたようだ。

コストメリットの高い「トラミル」を選定

類似したシステムが多数ある中で、最終的にトラミルを選んだ決め手はなんだったのだろうか。当時の選定要因について伺った。

「先ずは価格ですね。ただし、『安ければなんでも良い』ということではありません。トラミルの場合は、利用者の人数が増えても、月額料金が変わらないとう点に他のシステムには無いメリットを感じました。今は、服部が中心でおこなっている業務ですが、例えば『今後は他の人も運用できるようにして、業務の平準化・分散化を図る』といったことができるかもしれません。また、『現場の関係者にもトラミルを利用できるようにして、現場と工務のコミュニケーション効率を上げる』と言った使い方もできるかもしれません。そういった、この先の業務スタイルの変化といった可能性も踏まえて、将来のコストが明確なトラミルを一番に評価しました」(石塚 氏)

更に、トラミルなら「電子帳簿保存法の対応がラクになる」という決め手もあったようだ。それが操作性やUI(ユーザーインターフェース)のわかりやすさや、設定の簡便性、サポートの手厚さだったという。

「他のシステムでも、ペーパーレス化や業務効率化といった成果は期待できます。ですが、例えば、操作画面がわかりづらいとか、自分たちで初めに難しい設定をしなければならないといったことがあると、導入までにかかる時間、操作に慣れるまでの時間が気になります。一方で、トラミルは操作もわかりやすく、設定もサポートしてもらえるので、トライアルの段階から、『すぐに使いこなせるようになる』と感じることができました。だから、これなら電子帳簿保存法の対応もすぐにラクになるぞ!という期待が持てたんですね」(石塚 氏)

また、いろいろなシステムを比較検討している時から、トラミルの営業やSEとのコミュニケーションも選定要因の1つになっていたという。

「あと、クレオの担当の方ですよね。いろいろ相談にのっていただく中で、コミュニケーションがよくとれていたので、このままトラミルを使っていくことに対して不安を感じなったのも大きいです」(石塚 氏)

トラミルを選定の決め手

  • ・将来コストの明確性
  • ・カンタン操作と設定サポート
  • ・クレオ担当との充実したコミュニケーション

システム化の範囲について

トラミルは購入申請から発注処理、納品検収から支払依頼まで、購買業務の一連のプロセスに対応しているが、工務保全課の今回の導入は発注業務に絞った利用となった。そこにはどのような意図があったのだろうか。

「支払関連は本社で別のシステムを使っています。また、原料とか資材の購買業務も本社でしっかりとシステム化されています。工務保全課もそこまでシステム化の範囲を広げるとなると、他の部門や本社との調整など、やらないといけないことがいろいろ出てきます。今回の導入プロジェクトはスピードも優先していましたので、システム化の範囲はピンポイントにした方が良いと考えていました。つまり、いかに手軽に素早く紙を無くせるか、進捗を見えるようにできるかが重要なプロジェクトだったんです。ですから、トラミルが購買プロセス全体に対して、ピンポイントでも利用できるというのは、実は我々にとっても都合がよかったんですね。見積や発注の部分だけシステム化できれば、『部単位で手早く収まるぞ』という感じでした」(石塚 氏)

本稼働から3ケ月、改めて今の評価は?

トラミルの運用に切り替えてから約3ケ月が経過したところで、改めて今回のシステム化の効果や成果について、石塚 氏が感じていることを伺った。

「運用が変わったことで、切り替え直後は現場の方から『ああじゃない、こうじゃない!』といった声は正直ありましたね。ただ、ここにきてトラミルに慣れてきたのか、そういった話は出なくなりました。むしろ、紙が無くなった上に、そもそも操作がカンタンなシステムを入れた訳ですから、今では『業務がだいぶラクになった』とか、進捗をすぐに把握できるようになったことで『わかりやすくて良いですね』といった声が聞こえています。でもやっぱり、私個人としては、服部の業務が減ったということが、一番の成果だと感じています」(石塚 氏)

短縮した業務時間は月間20%

石塚氏は「具体的な時間短縮の効果も見えている」と続ける。

「1件あたりの発注処理から書類の保管までの作業時間ですが、トラミルを入れる前と後では約30分の短縮効果がでています。1カ月に90~100件ぐらいは処理していますので、理論上、1カ月に45時間ぐらいの作業時間を削減したことになります。これも理論値ですが、例えば1カ月あたりの服部の労働時間が200時間だとすれば、そこから20%の時間短縮をしたことになります。進捗の見える化やペーパーレス化といった課題を解決して、更に毎月20%もの時間短縮ができた訳ですから、今回のトラミル導入の費用対効果は非常に高かったと思います」(石塚 氏)

「トラミル」の導入により、工務保全課の購買業務は大幅に効率化された。特に、進捗の可視化と電帳法対応の簡便化は業務品質の向上につながっている。デジタル化の手段が多様化する中、本事例が同様の課題を抱えている企業に、次の一手として参考になれば幸いだ。

●インタビュー協力者

石塚 稔 氏 / 生産管理部課長
服部 正和 氏 / 工務保全課課長

  • ※掲載内容は2025年1月時点の取材に基づきます。
  • ※トラミルは株式会社クレオの商標、又は登録商標です。
  • ※その他、記載されている会社名・商品名は各社の商標、又は登録商標です。